ナルニア2006/03/04 05:50

 映画は今日から公開ですが、まだ観に行けません。
でも観る前に『ライオンと魔女』を読み返してみました。

 全巻通して読んだのはずいぶん前なので、細かいところは忘れてます。
なので新鮮な気持ちで読めたし、児童文学を中年になった今読むと、以前よりおもしろいと思える部分もありました。いい本はそれを読む人の年齢によって違う面を見せてくれるというけれど、まさにそんなかんじです。

 末っ子のルーシィが最初に衣装箪笥に入って、吊るしてある毛皮の先に手を伸ばしていって、もうすぐ箪笥の背板に手が届くはず、と思うあたりの描写が大好きです。読んでるほうもまったく無理なくあっち側にするっと気持ちが動いていっちゃうんですよね。

 願わくは途中でプロジェクトが頓挫なんてことのないよう、シリーズの最後まできちんと映画化してほしいですね。

ライオンと魔女2006/03/07 17:37

 昨夜レイトショーで観てきました。
平日の夜ということもあって、客は数えるほど。

 映画「ロード・オブ・ザ・リング」公開のときは、ホビット庄を馬車で訪れるとんがり帽子のガンダルフを見ただけで涙ぐんでた人がいたけれど、さもありなん。私は映画にあわせて本を読んだ新参者でしたが、昔からの愛読者のその気持ちは充分わかります。

 で、まあナルニアの場合は、雪の森の中にぽつんと立ってる街灯を見て、なつかしさで鼻の奥がツーンとなる人が多いはずです。

 小説の原作がある映画の場合、自分が抱いていたイメージと映画になったものが違っているのはあたりまえ。 イメージのまちがいさがしをはじめたらきりがないので、どれだけ早い段階で映画に没頭できるかがカギですね。

 いやほんと、細かいつっこみを書こうとしたらいくらでも書けちゃう。映画としてどうかというと、微妙な部分が多いのは確か。 CGもときどきあれっ?と思うくらい出来あがりにバラつきがあったように思いますし。

 けど、そんなことよりもナルニアの一読者として、純粋におもしろかったです。楽しんできました。

かなしき女王2006/03/09 02:35

『かなしき女王 ケルト幻想作品集 』 ちくま文庫
フィオナ マクラウド (著), 松村 みね子 (翻訳)

12話の短編と戯曲がひとつ。
どの話もひどく重苦しさが漂うのに、どこか自由な空気も感じます。
朽ちていくものの中から新しい命が生まれるようなふしぎな感覚。

表題作ともうひとつ、『女王スカァアの笑い』という話が特に気に入りました。
両方ともクーフリンを恋する女王の凄絶さを語っていますが、彼女の残酷さとは裏腹に、ひとつの(歪んではいるけれど)純粋な感情がさらっと描かれていて、一読忘れがたい印象の読み物でした。

松村みね子の訳は、雅趣に富んだ素晴らしいもの。

アルゴナウティカ2006/03/10 02:48

『アルゴナウティカ』
アポロニオス(作) 岡道男(翻訳) 講談社文芸文庫

 金羊皮を手に入れるため、英雄たちがアルゴ船に乗り東の果ての国へと赴くギリシアの叙事詩。
 映画『アルゴ探検隊の大冒険』の原作(というよりネタ本)としても有名ですが、訳書は現在この本のみだそうです。日本語で読める唯一の本なのに、数年前から絶版状態。私が住んでいる市の図書館には置いてなかったので、他所の地区から取り寄せてもらって読みました。
復刊ドットコムでもリクエストにほとんど票が入りません(登録している人が見てたら、どうか一票投じてください)。
 ギリシア神話のダイジェスト本などで内容は読めますが、実際に本編を読んでみると、ダイジェストではわからない細々した部分が魅力的です。

 第三歌で父を裏切りイアソンを助けようとするメデイアが、じつはこの叙事詩の主人公のような趣があります。その際のメデイアの心の葛藤もていねいに描写されています。イアソンを助けるか、助けずにいっそ自分も死んでしまおうか、悩んで悩んで泣き疲れるメデイアは、イアソンへの想いで胸を焦がします。

「それはくすぶる火のように身体じゅうを細い筋に沿ってめぐり、頭のうしろの、首の付け根を襲った。そこにいちばんはげしい痛みがさし込むのは、疲れを知らぬ愛(エロス)が苦悩の矢を胸に射たときなのだ。」(P.210)

 こんなのはダイジェストじゃわかりません。

 同じ講談社なんだし、学術文庫あたりで復刊してもらえないかな。

新刊について2006/03/12 07:17

 しつこいようですが、新刊『ボンデージフェアリーズ 残忍姉妹』は、

新作ではありません。

旧版の再編集本です。

 裏表紙に収録作一覧が載っているので、書店で手にされた方は、まちがって買ってしまうことはないと思うのですが、問題は通販。
通販だと中身を確認できないので弱りました。

 久保書店のサイトには本の説明がなにもなかったので、タイトルから「新作」だと思われてしまう懸念もあります。

 なので「アマゾン」と「セブンアンドワイ」の本の通販コーナーに、コメントを書いておきました。後者はコメントが反映されるまで時間がかかるそうなので、もう少し早めにやっておくべきでした。

ジョン・ハウの原画展2006/03/14 23:28

 「ジョン・ハウ:ファンタジー画の世界」 を観てきました。
http://www.canadanet.or.jp/p_c/howe.shtml

 入場無料なんですが、場所がカナダ大使館のせいなのか、ほとんど人がいなかったので、ゆっくりと観れました。
会場には「指輪物語」のみならず、「ホビットの冒険」や「シルマリルの物語」の大迫力イラストもあってウハウハです。

 原画は想像以上に大きいサイズだったのでびっくり。
原書房から出てる画集はなんであんなに小さいんだろう。多少高くなっても、もう少し大判にすればいいのに。

 いやしかし、生の絵っていうのはすごい。観る人に訴えかけるものがありますね。
ホビット庄の鉛筆スケッチの前にずーーーーっと佇んでた女性がいたんだけど、そのまま絵の中に入りたがってるように見えましたよ。

モローラ ―灰2006/03/15 07:40

 先月横浜で公演していたヤエル・ファーバー演出・脚本の『モローラ ― 灰』の舞台中継をNHK教育でやっていたので、録画して見ました。

 アイスキュロスの悲劇「オレステイア三部作」の舞台を現代の南アフリカに移して、非常にメッセージ性の強い劇に作り変えてあります。

 母クリュタイメーストラ(白人)が娘エレクトラ(黒人)を虐待するシーンは、リアルなむごたらしさでした。子供に対する母親の虐待のみならず、アパルトヘイト時代に行われた黒人への差別や拷問が舞台に要約されています。

 元の復讐劇と違い、この劇では本来なら死すべき運命の母親が殺されません。エレクトラの持つ復讐の斧を止めるのは、コロス。
普通の人々が復讐の連鎖をやめさせるところがミソなんでしょう。復讐は誰かが止めなければ、終わることはない。
 アパルトヘイト崩壊後の「真実和解委員会」が核になっているそうです。ゆえに単なる言葉だけではない、ほんとうの赦しが裏打ちされているように思います。

 アイギストスが殺される場面は、なんと長靴をアイギストスに見立てて演じられるのですが、このシーンはとても迫力がありました。

 コロスはアフリカの民俗音楽で成り立っていて、低音の独特の抑揚がすばらしい。これは劇場で体験してみたかった。