ブロークバック・マウンテン2006/04/03 23:50

 とてつもなくいい天気。
 ここ数日、いや数週間ほど引きこもりの生活だったので、おもいきって自転車で外出。暖かいけれど風がすごかった。
 我が家から自転車で40分ほどの場所にシネコンがあるので、そこまで足を延ばして「ブロークバック・マウンテン」を見てきました。

 ストーリーに期待してたんですが、うーん…それほどおもしろくはなかったですね。各映画賞総なめというイメージが先行して、自分の中で期待値が高まりすぎたか?演技を見るぶんには、役者はそれぞれとてもよかったんだけど。男優も女優も。
映像はきれいでした。山の自然描写もいいんだけど、町の撮り方もいちいちかっこいい。

 しかし平日の昼間とはいえ、客が自分を含めて3人しかいない。おまけに映写機のせいなのか、画面がずーっと微妙に揺れている。字幕がない場面ではさほどでもないんだけど、字幕を追うと酔いそうになる。昔の二番館の上映じゃないんだからねえ。
  
 見終わってから劇場の人を捕まえて「フィルムが揺れて見難かったから直したほうがいい」と言っておいたけど、こういうのは上映中でも文句をつけるべきですかね。でも席を立つとその間の画面は見れないわけだし…。音声が聞こえないとか途中で映像が切れたとかなら金返せと言えるけど、ものすごく微妙なので我慢してしまった。

 たしか『男性・女性』の中でジャン・ ピエール・レオがサイズの違う映画を見せられて、映写室まで怒鳴り込んでいくシーンがあったなあ。

ザ・スタンド2006/04/07 18:03

スティーヴン・キング著 深町眞理子訳 文春文庫

 「現代アメリカを舞台にした指輪物語」と帯に書かれてます。
 キングはトールキンの『指輪物語』を意識してこの小説を書いたそうだけれど、この人はほんとに指輪物語が好きなんですね。
他のキングの著作でもあちこちで指輪物語からの抜粋が見られるし、もちろんこの本の中でも<ちょうど、影横たわるモルドールの国の、パラド=ドゥアの黒い砦から、フロドを見つめてきたサウロンの目のように>などと、まるで聖書やシェイクスピアからの引用のように、読者が知っていて当たり前のごとく書いてます。

 順番としては『キャリー』、『呪われた町』、『シャイニング』の次に上梓された長編4作目にあたるこの本は、なぜか日本では2000年にようやく翻訳出版されてます。
 キングの小説はどれも無闇に長いのが特徴で、長さで敬遠する人もいるようですが、私などは、ことキングの本に限っては、長ければ長いほどうれしいと思うほうでした。
 しかし『ザ・スタンド』のハードカバーを本屋で手にしたときは、さすがに長い(重い)と感じましたねえ。キング最長の物語というふれこみは伊達じゃないなと。
 そんなわけで文庫落ちを待っていて、昨年の夏に購入したわけだけれど、長いこと4巻目を見失ってしまって(部屋を掃除してないせい(^^;)、今頃になってようやく読み終えました。
 
 次々と紹介されるキャラクターを忙しく覚える必要があるのだけれど、前半のテンポはゆったりとしているし、それぞれのキャラが個性的なのでまったく飽きさせない。
 新型インフルエンザによる世界の破滅の流れが相当なリアルさで迫ってくるせいもあってか、ひどく身近な物語に感じます。実際この本を読んでいるときに、誰かが近くで咳をしただけで、かなりいやな気持ちになれます。

 ところがストーリーが動き出すと、かえって少しダレました。生き残った人々が集まって作られた町「フリーゾーン」の政治がらみの話などは、個人的にはちょっと退屈。

 ちょうど闇の男ランドル・フラッグが暗躍しはじめるあたりから変化してくる物語の空気に、正直なところ最初はなかなか馴染めませんでした。
ああこういう話になってっちゃうのかと。
前半の設定がリアルだっただけに、空中に浮かぶフラッグは違和感ありありで。
 でもそここそがキングらしいとも言えるんでしょう。

 かわいそうなハロルドとかわいそうなトラッシュキャンは、いつまでも忘れられないだろうなと思います。
それから指輪のサムの役回りのようなトム・カレンも存在感があって大好きです。ホビット庄と違ってフリーゾーンには住みたいとは思わなかったけれど、トムにはまた会いたいと思える魅力がありました。

脚本ベスト1012006/04/09 15:49

「カサブランカ」が最優秀 脚本ベスト101を選出

米国の脚本家約1万人で組織する米脚本家組合は7日、歴代の優れた映画脚本ベスト101を発表し、最優秀脚本には、第2次世界大戦下のフランス領モロッコを舞台とした「カサブランカ」(1942年、脚本エプスタイン兄弟とハワード・コッチ)が選ばれた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060408-00000036-kyodo-ent

↓これがくだんの101本のリスト。
http://www.wgaeast.org/greatest_screenplays/2006/04/03/list/index.html

 ウディ・アレンとビリー・ワイルダーがそれぞれ4本入ってますね。

 新しいところではチャーリー・カウフマンの「エターナル・サンシャイン」が24位と大健闘。この映画は個人的に去年観た中でベストだったので嬉しいです。
 チャーリー・カウフマンはそのほかにも「マルコヴィッチの穴」「アダプテーション」と3本選ばれてます。

 映画にはストーリーより情感を見せるタイプのものもありますし、映画のおもしろさを脚本だけで云々はできないとは思いますが、乱暴な言い方をしてしまうと、脚本が良ければ、少々ダメな画面や役者でもおもしろく観れるのは確かではないかと。
 逆に映像がどんなにすごくても、脚本がつまらない映画は10分で飽きちゃう。
 深夜のテレビで古い映画をやっていて、何度も観ていてよく知ってるにも関わらず、ついつい引き込まれることが多いのは、きっと脚本がよくできてるからなんでしょう。

 しかし「十二人の怒れる男」がランク外なのは解せないなあ。

ウンディーネ2006/04/25 08:59

『水妖記(ウンディーネ)』
フーケー(著)  柴田治三郎(訳) 岩波文庫

 ずっと以前、なにかの本の記事で「ウンディーネはアンデルセンの『人魚姫』のような話だ」と紹介してあったので、なんとなく読んだつもりになっていたけれど、まったく気のせいでした。
 もし以前に読んでいたのなら忘れられるわけもないほど、哀しい愛の物語です。
簡略な文体なのに場面場面が目に浮かぶのがすばらしい。

 ウンディーネの叔父で、自身も水の精であるキューレボルンの不気味さはなかなかのもの。まるで昨今のホラー映画のような登場のしかたもありました。

とても良かったので、ついでに別な訳を図書館で借りてみました。

『ウンディーネ』岸田理生(訳)新書館 

 こちらはアーサー・ラッカムのイラストをふんだんに使ったもので、絵を見るためだけでも手元に置いておきたい一冊。
ところがオンラインで探してみたら品切れ状態のようで残念。

 訳が違うと雰囲気も変わるのは当然ですが、クライマックスはこちらのほうが胸に沁みるものがあります。
が、いくらか省略してある部分がありました。

トリスタンとイズー2006/04/28 11:22

『トリスタン・イズー物語』ベディエ(編)佐藤輝夫(訳)岩波文庫

 トリスタンの物語はアーサー王伝説の中に組み入れられたものを読んでいただけなので、改めて読んでみると知らないエピソードがいくつかありました。
 それにしてもイズーを娶ったマルク王の心境がおもしろい。ふたりの関係を知って激昂するのは当然のことながら、落ち着いたときには二人への愛情が深いことも窺わせる。極刑を言い渡しもするけれど、しかし、その立場を考えるとずいぶんと我慢強い男だなあと思う。


『トリスタンとイズー』ローズマリー・サトクリフ(著)井辻朱美(訳)沖積舎

 こちらはサトクリフ版のトリスタン。
 二人が飲んでしまう「愛の秘薬」の要素をばっさりと切り落とした大胆なつくりのものです。可能なかぎり元の伝説の空気を再現したかったのでしょう。
 お互いが惹かれあうアイテムとして薬を使わないことには賛否両論あると思いますが、私はこれはこれで成功していると思いました。
 それ以前に、さすがにサトクリフの文章は素敵です。最初のページからいきなり酔わせてくれました。すごい。
表紙絵は山田章博さんです。

 そういえばジェームズ・フランコ主演の映画"tristan & Isolde"は、日本ではいつ公開するんだろう。あんまりいい評判を聞かないけど、ジャンル的に大好物なので、来たら絶対観ますよ。

ケルト関連の本2006/04/29 11:41

たまたま続けて読んでみました。

『鷹の井戸』
イエーツ(著) 松村みね子(訳) 角川文庫
 「角川文庫40周年記念」の復刻本を古書店で購入。
 これは1989年に復刻されたものですが、初版は1953年です。特に再編集などしていないので、写植が旧仮名のままなのが嬉しい。訳も雰囲気があってすてきです。

 内容は日本の能に影響を受けたイエーツの、ケルト神話を元にした一幕物。永遠の命を与える水の湧く井戸を訪れたクーフリンと、井戸から水が染み出るのを50年間待っている老人、井戸を見守る鷹、という構図。


『ドルイドの歌』
O.R.メリング(作) 井辻朱美(訳) 講談社

 クー・フリンが活躍するケルトの伝説「クーリーの牛捕り」をネタにした話だというので読んでみたんですが、うーん、これは個人的に合いませんでした。

『ケルトの白馬』
ローズマリー・サトクリフ(作)灰島かり(訳)ほるぷ出版

 活字も大きく、小学校高学年から読める本ですが、内容はしっかりと大人向けです。
これはとても気に入りました。
 画像、白馬の向きに合わせて、本を横にしてあります。
 これは英国に残る古代ケルト人が作った白馬の地上絵。この絵を描いた少年が主人公の歴史フィクションなんですが、読み方によってはファンタジーっぽくもあります。

 この本の行間からは、さまざまな匂いが漂ってきます。
雨の匂い風の匂い、汗をかいた人や馬、草いきれ、石灰、血…等々。
むだのない研ぎ澄まされた文章なのに、それでいてじつに濃密。

 最近は本を読み終えると同時にストーリーを忘れていってしまうくらい記憶力が低下してきている私ですが、この「ケルトの白馬」は、これからもずっと忘れないと思います。